top of page
  • X
  • Instagram
  • スレッド

フォントが会社の“声”を決める──サンセリフ9割時代のAIブランディング

  • 執筆者の写真: social4634
    social4634
  • 5月19日
  • 読了時間: 5分

はじめに

「フォントは飾りではなく、企業の声そのものだ。」

近年、AI関連企業を見渡すと、ロゴやワードマークに「サンセリフ(sans-serif)系フォント」を採用しているところが実に多いという事実に気づきます。OpenAIの「OpenAI Sans」、Palantirの「Univers 55 Roman」、DeepMindの「DM Sans」など、事例を枚挙すればキリがありません。

本記事では、なぜサンセリフが9割にまで及ぶ支持を集めているのか、その背景にある“企業の声”としてのフォント選択について掘り下げます。


1. AI企業とサンセリフの蜜月関係

1-1. 幾何学的な正確さと人間味のバランス

AI企業の多くは、技術力やデータ分析の正確性を前面に打ち出しつつも、「人間との共創」を大切にする傾向があります。


OpenAI Sans: 幾何学的精度と、わずかな丸みを帯びたシェイプを併せ持ち、技術的先進性と親しみやすさを両立。


DeepMindのDM Sans: コルフォン・ファウンダリーとの共同開発で、人間中心のAI研究をロゴタイポグラフィに落とし込む。


この「技術×人間」の両立こそが、サンセリフの持ち味である“クリーンで機能的な印象”と、わずかな丸みやプロポーションで得られる“人間味”の微妙なバランスに集約されています。


1-2. デジタル環境での可読性

もう一つの大きな要因は、デジタル・スクリーンでの読みやすさ。


サンセリフ系は、小さな画面やあらゆる解像度でも可読性が高い。


文字数や行間を圧迫しにくいので、Webページ、アプリ、モバイル画面で“乱れ”が少ない。


AI企業はデジタル製品やオンラインコンテンツを主戦場とするため、視認性・可読性・汎用性が重視されるのは必然と言えるでしょう。


1. 主要AI企業のフォント事例比較

2-1. OpenAI — 「OpenAI Sans」

概要: スイスのABC Dinamo社の「Favorit」をベースにカスタム開発。


特徴: 幾何学的な構造 + 丸みのあるコーナー。


狙い: “機械的すぎない”印象と“先端技術”の象徴を両立。


2-2. Palantir — 「Univers 55 Roman」

概要: 1957年にAdrian Frutigerがデザインした歴史的名作フォント「Univers」の一部。


特徴: 均整の取れたストロークとシンプルな直線。


狙い: 大量のデータを正確に見通す分析力を示唆。ロゴ全体で凝集感を出すための微調整(トラッキング-2.5%)が施されている。


2-3. DeepMind — 「DM Sans」「DM Serif」

概要: Colophon Foundryとの共同開発で、サンセリフとセリフを同時運用するハイブリッド戦略。


特徴: 幾何学的なボディに、わずかに温かみを感じる曲線。


狙い: AI研究の多角性を象徴。「厳密さ(Sans)× 人間性(Serif)」という二面性を体現。


2-4. Anthropic — 完全カスタム

概要: 特定のベースフォントを持たず、独自のタイポグラフィを一から設計。


特徴: 小文字「i」を逆スラッシュに変えるなど、徹底したオリジナリティ。


狙い: AIの倫理面や人間中心アプローチを強調するため、完全カスタムでブランディングの差別化を図る。


1. フォントは会社の“声”をどう表現するか

3-1. 声のトーン:テクノロジーか人間か

フォント選びは、企業が発する「声」の調子(トーン)を決定づけます。


テクノロジー寄りの“無機質”感を強めたいなら、直線的で角ばったサンセリフを採用し、文字間をタイトにする。


人間的な温かみを強調したいなら、コーナーやカウンターを丸く、行間をやや広めにとり、インクトラップなどのディテールを活かす。


3-2. 大文字と小文字の使い分け

大文字主体: 堅牢で威厳ある印象。AI企業での過度な大文字使いは「冷たい」印象になるリスクも。


小文字主体: 親しみやすく柔らかい印象。Anthropicやperplexityのように、小文字のワードマークでフレンドリー感を出す企業も多い。


3-3. カスタムフォントの価値

ブランド独自性の最大化: 大企業はこぞってカスタムフォントを開発し、自社の世界観を徹底表現。


知的財産保護: 競合との混同リスクが減り、商標保護の一環にもなる。


費用・リソース: 一からフォントを作るのは高コスト・高難度なので、スタートアップではベースフォントを改変する手法が多い(OpenAI方式)。


1. サンセリフ9割時代の背景

4-1. スクリーン・ファーストのデザイン

AI企業はオンラインサービスやSaaSが主力。


スクリーン上での可読性を徹底追求すると、洗練されたサンセリフ体が最適解になりがち。


4-2. “未来感”の演出

セリフ系フォントは伝統的・クラシカルな印象を与えやすい。


一方でサンセリフは、**“モダン” “先進的”**なイメージを伝えやすい。


AI=未来、というわかりやすいメッセージをフォントでも表現。


4-3. プロトタイプ・柔軟性

AI企業はスピーディにサービスやUIを変更・改善することが多い。


シンプルで可変しやすいサンセリフだと、UIの全体デザインを崩さずに多少の拡張が容易。


1. スタートアップが学ぶべき“フォント”選びのポイント

5-1. ベースフォントを決める

いきなりカスタム開発はハードルが高い。


推奨手順:Favフォントを選び→自社のコンセプトに合わせて微調整→必要があればカスタム化。


5-2. 文字間やサイズ規定を明確にする

AI企業はロゴのサイズや文字間に厳格なルールを設定。


Palantirがトラッキングを-2.5%と細かく定義したように、微妙なバランスで印象が変わる。


5-3. ロゴとUIで変えるか統一するか

UIは可読性最優先、ロゴはシンボリックにする場合が多い。


大企業では、「ロゴ用フォント」「UI用フォント」を分ける二段構えも一般的。


5-4. Bilingual・マルチスクリプト対応

日本やアジア市場を視野に入れると、日本語・中国語・韓国語などの多言語対応が必須に。


OpenAIが「OpenAI Sans JP」開発を進めているように、漢字・仮名との整合性をどうとるかが課題。


1. まとめ:フォントが紡ぐ企業の物語

サンセリフが9割を占めるAI企業のロゴデザイン——その背景には、テクノロジーと人間性のバランスをどう表現するかという命題が隠れています。

フォントは単なる文字の形状ではなく、「企業の声」や「ブランドの個性」を伝える言語。サンセリフを選ぶことで得られる“モダンで機能的”なイメージは、AI時代の本質を映し出していると言えるでしょう。


最後に

これからAIスタートアップを立ち上げる方や、ブランド刷新を検討中の方は、ぜひフォント選択に対して一歩踏み込んだ戦略的アプローチを試みてみてください。

最先端の技術と人間の感性をつなぐ、その真ん中に“文字”という表現があるのです。

 
 
 

コメント


bottom of page